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7分42秒
闇夜を照らす街灯の下、老人の行く手に現れたのは、不敵な笑みを浮かべる男だった。
「ジジイ、動くな」
「何じゃ」
「動くな、喋るな。脳天に1発ブチ込むぞ?」
「……」
「俺は本気だ。まだサヨナラしたくないだろ? 残りの人生を有意義に過ごしたかったら、こっちに財布を投げろ」
「……」
「へへへっ、毎度あり」
「……」
「また頼むぜ。じゃあな」
「待て、バカ者」
「あ? 死にてぇのかジジイ」
「死ぬのはオマエさんじゃ」
「恐怖でボケたか? マジでブッ殺すぞ」
「マジでブッ殺されるのはオマエさんじゃ」
「最後の警告だ。俺の気が変わる前に――」
「なぜならば、その財布は爆弾だからじゃ」
「は? 意味が分かんねぇんだよ。次の仕事が控えてんだ、今すぐどっかへ消えろ」
「正確には爆弾が組み込まれた財布じゃ」
「マジでイカれてるみてぇだな」
「ワシは科学者じゃ。会社で爆弾の研究開発をしておる。本当じゃ」
「科学者だと?」
「このIDカードを見てみろ」
「暗くて見えねぇんだよ」
「近寄るな! ドカンとやるぞ!」
「はぁ……、何だってんだ一体」
「そうじゃ、その場を動くな!」
「はいはい」
「ほら、ワシの首に掛かってるじゃろ。目を凝らして見れ」
「……」
「どうじゃ?」
「科学者ってのは本当……らしいな。しかも超有名な兵器会社だ」
「ふぅ、やっと信じたか」
「おいジジイ。だからってこれが爆弾だなんて話を信じるワケねぇだろ。大体そんな爆弾を――」
「話の途中で悪いが、あんまり強く握らぬ方がいいぞ」
「何でだよ」
「バカ者め! ドカンといくかもしれんじゃろうが!」
「な、何だコイツ!」
「ほらほら! もっと優しく扱うのじゃ!」
「黙れ! そんな事あり得ねぇに決まってんだろ!」
「あり得ない事に挑戦するのが科学者じゃ!」
「屁理屈ばっかり言いやがって! もし本当だって言うなら証拠を見せてみろ!」
「ふぉふぉふぉ、いいじゃろう! だが証拠とは財布が爆発する事じゃ。即ち、財布を持つオマエさんは残念な結果になるワケだのぅ」
「脅してるつもりか!」
「おっと失礼、残念な結果になれば見る事が出来んな。まぁ、証拠を肌で感じるワケじゃから同じ事か。さて、それでも証拠が欲しいかね?」
「長々とくだらねぇ事を! 調子に乗んな!」
「自分の残念な結果をくだらねぇと吐き捨てるとは、なかなかの大物じゃ」
「うるせぇ! そんなに言うならなぁ、爆発する前にアンタをブッ殺してやんよ! どうよ、名案だろ!」
「名案じゃが、惜しいのぅ。実は爆弾にはセンサーが付いていて、ワシの脳か心臓が停止すると爆発する仕組みになっておるのじゃ。つまりワシを殺せばオマエさんも死ぬワケだのぅ。もちろん自由に爆発させる事だって可能じゃ。例えば今とかな」
「そんな事すりゃ、アンタも巻き添えで死ぬだろうが!」
「心配には及ばぬよ。その爆弾は特殊でな、被害範囲が極めて狭いのじゃ。ワシらの距離はパッと見て3メートル前後。オマエさんがブッ飛んでもワシは平気じゃ」
「ふざけやがって! こんな物――」
「言い忘れておった。放り投げない方が良いぞ。さっき温度センサーのスイッチを入れておいたからな。まぁ、要するに手放した瞬間にドカンという事じゃ」
「手放せばドカンだと? バカげた嘘を次々と!」
「嘘? 良く考えてみろ。なぜワシが嘘をつく必要があるのじゃ?」
「この財布を取り返すために決まってんだろ!」
「あぁ、だから強く握るなって」
「う、うるせぇ」
「そもそも、財布には少しのカネしか入っておらんし、ワシはクレジット・カードを持たない人間じゃ。盗られたところで痛くも痒くもないわい。それに、もう老い先短い人生じゃ。最期の時を有意義に過ごしたいと思っておるのに、こんなところで命を張った嘘をつく意味があると思うのか?」
「そりゃそうだけど余りにバカげてる! 財布爆弾を造って、しかも持ち歩いてるなんて意味が分からねぇだろ!」
「バカで無意味、大いに結構。だが、財布爆弾は事実そこにあるではないか。オマエさんの言葉を借りるなら、マジでイカれた科学者がマジでイカれた爆弾を造ったワケじゃ。ひゃひゃひゃ、極めて有意義な時間の使い方だと思わんかね!」
「アンタ狂ってる。絶対に狂ってるよ!」
「ひゃひゃひゃ、実際のところオマエさんも少し疑っておるのじゃろう? 絶対に嘘だと断言が出来んのじゃろう? もしかしたら、となぁ!」
「こ、このジジイ!」
「動くな!」
「な、何だ!」
「動くな、喋るな。ドカンとやるぞ?」
「な……」
「ワシは本気じゃ。まだサヨナラしたくないじゃろ? 残りの人生を有意義に過ごしたかったら、銃をこっちに投げろ」
「……」
「投げろ、と言っておるのじゃ! 早くせい!」
「……」
「ふぉふぉふぉ、どうもありがとう」
「……」
「じゃあ達者でな! スリルのある有意義な時間じゃったわい! ふぉふぉふぉ」
男の耳元に笑い声を残して、老人は闇夜に消えた。
「ジジイ、動くな」
「何じゃ」
「動くな、喋るな。脳天に1発ブチ込むぞ?」
「……」
「俺は本気だ。まだサヨナラしたくないだろ? 残りの人生を有意義に過ごしたかったら、こっちに財布を投げろ」
「……」
「へへへっ、毎度あり」
「……」
「また頼むぜ。じゃあな」
「待て、バカ者」
「あ? 死にてぇのかジジイ」
「死ぬのはオマエさんじゃ」
「恐怖でボケたか? マジでブッ殺すぞ」
「マジでブッ殺されるのはオマエさんじゃ」
「最後の警告だ。俺の気が変わる前に――」
「なぜならば、その財布は爆弾だからじゃ」
「は? 意味が分かんねぇんだよ。次の仕事が控えてんだ、今すぐどっかへ消えろ」
「正確には爆弾が組み込まれた財布じゃ」
「マジでイカれてるみてぇだな」
「ワシは科学者じゃ。会社で爆弾の研究開発をしておる。本当じゃ」
「科学者だと?」
「このIDカードを見てみろ」
「暗くて見えねぇんだよ」
「近寄るな! ドカンとやるぞ!」
「はぁ……、何だってんだ一体」
「そうじゃ、その場を動くな!」
「はいはい」
「ほら、ワシの首に掛かってるじゃろ。目を凝らして見れ」
「……」
「どうじゃ?」
「科学者ってのは本当……らしいな。しかも超有名な兵器会社だ」
「ふぅ、やっと信じたか」
「おいジジイ。だからってこれが爆弾だなんて話を信じるワケねぇだろ。大体そんな爆弾を――」
「話の途中で悪いが、あんまり強く握らぬ方がいいぞ」
「何でだよ」
「バカ者め! ドカンといくかもしれんじゃろうが!」
「な、何だコイツ!」
「ほらほら! もっと優しく扱うのじゃ!」
「黙れ! そんな事あり得ねぇに決まってんだろ!」
「あり得ない事に挑戦するのが科学者じゃ!」
「屁理屈ばっかり言いやがって! もし本当だって言うなら証拠を見せてみろ!」
「ふぉふぉふぉ、いいじゃろう! だが証拠とは財布が爆発する事じゃ。即ち、財布を持つオマエさんは残念な結果になるワケだのぅ」
「脅してるつもりか!」
「おっと失礼、残念な結果になれば見る事が出来んな。まぁ、証拠を肌で感じるワケじゃから同じ事か。さて、それでも証拠が欲しいかね?」
「長々とくだらねぇ事を! 調子に乗んな!」
「自分の残念な結果をくだらねぇと吐き捨てるとは、なかなかの大物じゃ」
「うるせぇ! そんなに言うならなぁ、爆発する前にアンタをブッ殺してやんよ! どうよ、名案だろ!」
「名案じゃが、惜しいのぅ。実は爆弾にはセンサーが付いていて、ワシの脳か心臓が停止すると爆発する仕組みになっておるのじゃ。つまりワシを殺せばオマエさんも死ぬワケだのぅ。もちろん自由に爆発させる事だって可能じゃ。例えば今とかな」
「そんな事すりゃ、アンタも巻き添えで死ぬだろうが!」
「心配には及ばぬよ。その爆弾は特殊でな、被害範囲が極めて狭いのじゃ。ワシらの距離はパッと見て3メートル前後。オマエさんがブッ飛んでもワシは平気じゃ」
「ふざけやがって! こんな物――」
「言い忘れておった。放り投げない方が良いぞ。さっき温度センサーのスイッチを入れておいたからな。まぁ、要するに手放した瞬間にドカンという事じゃ」
「手放せばドカンだと? バカげた嘘を次々と!」
「嘘? 良く考えてみろ。なぜワシが嘘をつく必要があるのじゃ?」
「この財布を取り返すために決まってんだろ!」
「あぁ、だから強く握るなって」
「う、うるせぇ」
「そもそも、財布には少しのカネしか入っておらんし、ワシはクレジット・カードを持たない人間じゃ。盗られたところで痛くも痒くもないわい。それに、もう老い先短い人生じゃ。最期の時を有意義に過ごしたいと思っておるのに、こんなところで命を張った嘘をつく意味があると思うのか?」
「そりゃそうだけど余りにバカげてる! 財布爆弾を造って、しかも持ち歩いてるなんて意味が分からねぇだろ!」
「バカで無意味、大いに結構。だが、財布爆弾は事実そこにあるではないか。オマエさんの言葉を借りるなら、マジでイカれた科学者がマジでイカれた爆弾を造ったワケじゃ。ひゃひゃひゃ、極めて有意義な時間の使い方だと思わんかね!」
「アンタ狂ってる。絶対に狂ってるよ!」
「ひゃひゃひゃ、実際のところオマエさんも少し疑っておるのじゃろう? 絶対に嘘だと断言が出来んのじゃろう? もしかしたら、となぁ!」
「こ、このジジイ!」
「動くな!」
「な、何だ!」
「動くな、喋るな。ドカンとやるぞ?」
「な……」
「ワシは本気じゃ。まだサヨナラしたくないじゃろ? 残りの人生を有意義に過ごしたかったら、銃をこっちに投げろ」
「……」
「投げろ、と言っておるのじゃ! 早くせい!」
「……」
「ふぉふぉふぉ、どうもありがとう」
「……」
「じゃあ達者でな! スリルのある有意義な時間じゃったわい! ふぉふぉふぉ」
男の耳元に笑い声を残して、老人は闇夜に消えた。
父と息子
「オヤジ、ちょっと訊きたい事があるんだけど」
「パパに話しかけてくるなんて珍しいな。いいぞいいぞ、何でも答えてやろう!」
「もしかしてなんだけど――」
「もったいつけるなよ、ハハハ」
「おれたちって、宇宙人なのか?」
「ハ……」
「黙るなよ! 答えてくれよ!」
「……誰かに、そう言われたのか?」
「そうじゃないけどさ!」
「なら、おまえの気のせいだ。部屋に戻って勉強でもしてなさい」
「こっち向けよ! 納得出来ねぇんだよ!」
「……何が、納得出来ないんだ?」
「だってさ、前々から思ってたけど、おれたちって他の人と違うじゃないか!」
「五体満足。勉強も運動も出来る。ゴハンもうまい。何が違うと言うんだ」
「明らかに肌が灰色だろ!」
「……人間の価値は肌の色で決まらんし、比べられてもいかん。最も大切なのは心だ。そう教えただろう」
「おれたちの目は人の倍以上デカいし、それに黒目しかないのは何でだよ?」
「……家系だ。チワワみたいでカワイイじゃないか」
「家の前の畑に、ちょくちょくミステリー・サークルが出来るのは?」
「……ストリート・アート的なモノじゃないのかな。ポップな感覚で、ヤングな誰かがイタズラでもしたんだろう」
「この辺の空で、頻繁にUFOが目撃されるのは?」
「……ラジコンとかの見間違いじゃないのかな。もしくはプラズマとか」
「頭で念じれば、モノを動かせるのは?」
「……きっと、無意識に手品が使えるんだよ。ユリ・ゲラーもびっくりだな、ハハハ」
「ピピピって電波を送れば、相手に自分の意思を伝えられるのは?」
「……“以心伝心”と言う言葉があるじゃないか。お互いを理解し合っている証拠だ」
「じゃあ訊くけど! テレビの宇宙人特集で、オジサンの顔が放送されてたのは何でだよ!」
「……オジサンは、目立ちたがり屋なんだよ」
「いい加減にしてくれ! おれ見たんだよ! オヤジとオジサンが、手も触れずにミステリー・サークルをつくって、その上をUFOがクルクル回ってるのを!」
「み、見たのか!」
「オヤジ、正直に答えてくれよ!」
「……」
「宇宙人なんだろ?」
「……」
「そうなんだろ?」
「……もし、仮に宇宙人だったらどうするんだ?」
「わかんねぇよ」
「パパを恨むか?」
「そんな事ねぇよ。オヤジは、おれを男手ひとつで育ててくれた。苦労もしたと思う。そんなオヤジを恨むワケねぇだろ」
「……タカシ」
「本当の事、教えてくれよ」
ピピピ
「……オヤジ、ありがとう。……おれ、勉強がんばるよ」
BGM:小田和正 『言葉にできない』
「パパに話しかけてくるなんて珍しいな。いいぞいいぞ、何でも答えてやろう!」
「もしかしてなんだけど――」
「もったいつけるなよ、ハハハ」
「おれたちって、宇宙人なのか?」
「ハ……」
「黙るなよ! 答えてくれよ!」
「……誰かに、そう言われたのか?」
「そうじゃないけどさ!」
「なら、おまえの気のせいだ。部屋に戻って勉強でもしてなさい」
「こっち向けよ! 納得出来ねぇんだよ!」
「……何が、納得出来ないんだ?」
「だってさ、前々から思ってたけど、おれたちって他の人と違うじゃないか!」
「五体満足。勉強も運動も出来る。ゴハンもうまい。何が違うと言うんだ」
「明らかに肌が灰色だろ!」
「……人間の価値は肌の色で決まらんし、比べられてもいかん。最も大切なのは心だ。そう教えただろう」
「おれたちの目は人の倍以上デカいし、それに黒目しかないのは何でだよ?」
「……家系だ。チワワみたいでカワイイじゃないか」
「家の前の畑に、ちょくちょくミステリー・サークルが出来るのは?」
「……ストリート・アート的なモノじゃないのかな。ポップな感覚で、ヤングな誰かがイタズラでもしたんだろう」
「この辺の空で、頻繁にUFOが目撃されるのは?」
「……ラジコンとかの見間違いじゃないのかな。もしくはプラズマとか」
「頭で念じれば、モノを動かせるのは?」
「……きっと、無意識に手品が使えるんだよ。ユリ・ゲラーもびっくりだな、ハハハ」
「ピピピって電波を送れば、相手に自分の意思を伝えられるのは?」
「……“以心伝心”と言う言葉があるじゃないか。お互いを理解し合っている証拠だ」
「じゃあ訊くけど! テレビの宇宙人特集で、オジサンの顔が放送されてたのは何でだよ!」
「……オジサンは、目立ちたがり屋なんだよ」
「いい加減にしてくれ! おれ見たんだよ! オヤジとオジサンが、手も触れずにミステリー・サークルをつくって、その上をUFOがクルクル回ってるのを!」
「み、見たのか!」
「オヤジ、正直に答えてくれよ!」
「……」
「宇宙人なんだろ?」
「……」
「そうなんだろ?」
「……もし、仮に宇宙人だったらどうするんだ?」
「わかんねぇよ」
「パパを恨むか?」
「そんな事ねぇよ。オヤジは、おれを男手ひとつで育ててくれた。苦労もしたと思う。そんなオヤジを恨むワケねぇだろ」
「……タカシ」
「本当の事、教えてくれよ」
ピピピ
「……オヤジ、ありがとう。……おれ、勉強がんばるよ」
BGM:小田和正 『言葉にできない』
方程式
人類と地球の関係は、
〔人類+環境対策=美しい地球〕
と表す事が出来る。
つまり、
〔環境対策=美しい地球−人類〕
である。
〔人類+環境対策=美しい地球〕
と表す事が出来る。
つまり、
〔環境対策=美しい地球−人類〕
である。
宇宙最強人に聞いてみた
「“人生、宇宙、すべての答え”とは何ですか?」
「ググれば出ますよ」
「ググれば出ますよ」
なぞなぞ
村に魔獣がやってきた!
イリピット・ノアックがやってきた!
甘く身響く歌声が
聴くものを惑わせる
ひね曲がった鉤爪は
逆らうものを打ち貫く
裂け開いた大口で
全てのものを食らい込む
狂った魔獣をどうにかしろ!
イリピット・ノアックをどうにかしろ!
毒の酒を用意しろ
魔獣の腹に流し込め
優しい言葉を用意しろ
弱った魔獣を手なずけろ
魔獣の道を用意しろ
進む先を指し示せ
魔獣の道を進んでいく!
イリピット・ノアックが去っていく!
道の先には何がある?
心配ない
となり村があるだけだ!
イリピット・ノアックがやってきた!
甘く身響く歌声が
聴くものを惑わせる
ひね曲がった鉤爪は
逆らうものを打ち貫く
裂け開いた大口で
全てのものを食らい込む
狂った魔獣をどうにかしろ!
イリピット・ノアックをどうにかしろ!
毒の酒を用意しろ
魔獣の腹に流し込め
優しい言葉を用意しろ
弱った魔獣を手なずけろ
魔獣の道を用意しろ
進む先を指し示せ
魔獣の道を進んでいく!
イリピット・ノアックが去っていく!
道の先には何がある?
心配ない
となり村があるだけだ!






